山のてっぺんの市営の斎場へ向かう。
ああ このお寺 夏休みのたびに写生しに連れてきてもらったなぁ
ああ このプール今年の夏に子どもたち連れて来たなぁ あの時は元気だったなぁ
向かう道で折れそうになる。
がんばれ。がんばれ。
市営の火葬場の同じ建物の中に備え付けの祭壇があって
そこを手早く葬儀屋さんが飾りつけてゆく
30分もしないうちに立派な会場が仕上がった。
棺に入って祀られているけれど
おかあちゃんはいつもと変わらずふっくらした顔をしていて
お参りする気になれない
おかあちゃん、みんな来てくれるって、と声をかけたら
もういいのにぃ、と言ってるような気もする
おじさんが着いた。母の弟だ。
秋ごろから電話に出なくなって母と心配していたのはビンゴ。
やっぱり入院して施設で暮らしていた。
おじさんの息子と娘もおじさんに付き添ってきてくれた。
このいとこたちに会うのは久しぶり。
大好きだった従兄は背中にチャックが着いて中に入ってるんでしょ本人が?というくらい
体積が数倍になっていました。
お義父さんが着いた。義弟くん、へろへろだ。
アウェイをものともしない、いつも通りの激走お義父さんにちょっと和む。
うん、生きたいように生きよ年寄り。
これでお参りの人は全部、のはずが
どこからどう回ったのか
母の短歌友だちがきてくださった。
友だちと言っても10代と20代と30代。
全員が私よりも年下だ。
棺に入れようと思って持ってきた帽子を見せて
これをよくかぶってたように思うんです、どうでした?と尋ねたら
あ、それです。それ、一番のお気に入りでしたよ。と教えていただく。
見たことのある布のペンケースだな、と思っていたら
これ、おかあさまにいただいたんですよ、とおっしゃる。
わたしも、ぼくも、と若い学生さんたちがみんななにか母の手作り品をもらってくださっていた。
短歌の批評は年齢が関係ない。肩書きももちろん関係ない。
母の作品評は撰者の先生の作品でも容赦ないかわりに
学生の歌だろうが良い部分をよろこんで取り上げる。
遠慮して言いたいことが言えない学生歌会のみなさんは
大先生をバッサリぶった切ってケロリとしている母をたいそう愛してくださっていたようだ。
母がキツイことを申し上げてたでしょう。ごめんなさいねー。
いえいえ、やさしかったですよ。
作品評を読んでいたら主催先生の歌でも容赦なくって。
いやあ、それがもう痛快で。
笑顔で語ることがいちばんよろこぶよね。
それでも、ときどき動けなくなる。
心が折れそうになるときって体がこわばるんだと知る。
棺の中のおかあちゃんに
「これ!しゃんとしなさい!あんたがここでがんばらんとどうするの!」と言われたので
ぎゃーオニめー最後までーと母娘のいつもの軽口を胸に溜めてがんばる。
これで最後のお別れです、と
棺にお気に入りの帽子と、
原稿用紙と、封筒と、鉛筆と清書用のペンと、ハンコと
23日からの新しい下書き帳と、元気に遊び歩いてる母の歌の載った歌集を一冊入れた。
また動けなくなる。ヤバイ。
大きな声をあげて泣いてしまったら きっともう立てなくなる
棺のふちを握って のどにぐりぐりをためながら 涙だけは存分にそのままほうっておいた。
きったない顔で泣いちゃったよおかあちゃん。
こじんまりと、あったかく おみおくりできました。
ああ このお寺 夏休みのたびに写生しに連れてきてもらったなぁ
ああ このプール今年の夏に子どもたち連れて来たなぁ あの時は元気だったなぁ
向かう道で折れそうになる。
がんばれ。がんばれ。
市営の火葬場の同じ建物の中に備え付けの祭壇があって
そこを手早く葬儀屋さんが飾りつけてゆく
30分もしないうちに立派な会場が仕上がった。
棺に入って祀られているけれど
おかあちゃんはいつもと変わらずふっくらした顔をしていて
お参りする気になれない
おかあちゃん、みんな来てくれるって、と声をかけたら
もういいのにぃ、と言ってるような気もする
おじさんが着いた。母の弟だ。
秋ごろから電話に出なくなって母と心配していたのはビンゴ。
やっぱり入院して施設で暮らしていた。
おじさんの息子と娘もおじさんに付き添ってきてくれた。
このいとこたちに会うのは久しぶり。
大好きだった従兄は背中にチャックが着いて中に入ってるんでしょ本人が?というくらい
体積が数倍になっていました。
お義父さんが着いた。義弟くん、へろへろだ。
アウェイをものともしない、いつも通りの激走お義父さんにちょっと和む。
うん、生きたいように生きよ年寄り。
これでお参りの人は全部、のはずが
どこからどう回ったのか
母の短歌友だちがきてくださった。
友だちと言っても10代と20代と30代。
全員が私よりも年下だ。
棺に入れようと思って持ってきた帽子を見せて
これをよくかぶってたように思うんです、どうでした?と尋ねたら
あ、それです。それ、一番のお気に入りでしたよ。と教えていただく。
見たことのある布のペンケースだな、と思っていたら
これ、おかあさまにいただいたんですよ、とおっしゃる。
わたしも、ぼくも、と若い学生さんたちがみんななにか母の手作り品をもらってくださっていた。
短歌の批評は年齢が関係ない。肩書きももちろん関係ない。
母の作品評は撰者の先生の作品でも容赦ないかわりに
学生の歌だろうが良い部分をよろこんで取り上げる。
遠慮して言いたいことが言えない学生歌会のみなさんは
大先生をバッサリぶった切ってケロリとしている母をたいそう愛してくださっていたようだ。
母がキツイことを申し上げてたでしょう。ごめんなさいねー。
いえいえ、やさしかったですよ。
作品評を読んでいたら主催先生の歌でも容赦なくって。
いやあ、それがもう痛快で。
笑顔で語ることがいちばんよろこぶよね。
それでも、ときどき動けなくなる。
心が折れそうになるときって体がこわばるんだと知る。
棺の中のおかあちゃんに
「これ!しゃんとしなさい!あんたがここでがんばらんとどうするの!」と言われたので
ぎゃーオニめー最後までーと母娘のいつもの軽口を胸に溜めてがんばる。
これで最後のお別れです、と
棺にお気に入りの帽子と、
原稿用紙と、封筒と、鉛筆と清書用のペンと、ハンコと
23日からの新しい下書き帳と、元気に遊び歩いてる母の歌の載った歌集を一冊入れた。
また動けなくなる。ヤバイ。
大きな声をあげて泣いてしまったら きっともう立てなくなる
棺のふちを握って のどにぐりぐりをためながら 涙だけは存分にそのままほうっておいた。
きったない顔で泣いちゃったよおかあちゃん。
こじんまりと、あったかく おみおくりできました。
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